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ベテランと新人の間

 最近、ライトノベル作家として「ベテラン」という扱いを受けるようになってきた。自分自身はいまだ「新人」のつもりだったのに、これはいけないと思う。自らのステータスに対する認識の違いは、求められていることと出した結果について、関係者の評価が変わってくるからだ。
 処女作「ストーンヒートクレイジー」の発売が2006年10月だから、そろそろデビューして丸7年。なるほど……もう7年も経っていたのか。毎年1冊以上小説を上梓できていることは純粋に幸運なことであるけれど、ベテランを名乗っていいのか、という疑問は残る。
 ライトノベルの歴史はいまだ浅いといっていいだろう。現時点で一番古い(のかな?)富士見書房のファンタジア大賞の発足が1989年、ファンタジア文庫創刊が1988年、スニーカー文庫の前身が1987年、それ以前のソノラマ文庫やコバルト文庫などもあるけれど私が戦っている場としての「ライトノベル」ならば、歴史は25年ということになろうか。ああ、四半世紀も経っていた。そこで7年となると……そうか、ベテランなのか。
 逆にどうして私は「新人」のように感じているのだろうか。いくつか理由があるように思うので、思うままに書いておきたい。

 ひとつ目は、毎年、新人が現れることだ。私は酒の場が好きだし、新人の方が来ると「お、どんな人だ?」と興味が湧く。彼らはナイーブだったり、寡黙だったり、酒が飲めたり、飲めなかったり、ライトノベルが好きだったり、アニメが好きだったり、(釣りの話をするやつは全然いないけど)多種多様である。だけれどどこか共通の――におい、みたいなものがある。業界に片足を突っ込んでしまった、とんでもないところに来てしまった、といったふうな「不安」だ。毎年誰かしら新人さんと話すことがあるので、私の心にいまだくすぶる「不安」が共鳴して、最新バージョンにアップデートされていくのかもしれない。

 二つ目は、ライトノベル市場というものに関係しているかもしれない。ライトノベルは「作家買いされない」ことで知られている。このことの是非は置いておくけれど、結果として、新シリーズをリリースするたびに新人作家や大御所作家とまったく同じスタートラインに立つ。すごいことだ。これほど公平な市場もなかなかないと思う。都度、手を変え品を変えプロモーションしなければならない版元には同情するけれど。
 三つ目は、二つ目にも近いのだけれど、ベテランだろうと新人だろうと自分自身が「作家である」という感覚が薄いことだ。もちろん個人差はあるだろうけれど、私は自分が「作家である」といまだ胸を張って言えない。この感覚は、ヒット作があるとか、本を何十冊と出したとか、そういう明確な基準で払拭されるものではないように感じている。私が「作家である」のは私が新作をリリースしているときだけだ。小説を書くのを辞めたとき、私はもう「作家ではない」。本が出るかどうかは出版社の意向次第であり、この事実を責める気もない。出版は文化事業であるがライトノベル事業が相手にしているのは完全な商業市場だからだ。新シリーズで大コケすると次作を出すハードルがぐんと上がる。つまり「作家であり続ける」ことが難しくなる。逆もまた真なり。ヒットを出して複数の出版社と仕事をするようになれば次作は出やすくなる。
 小説を書かない理由はほんとうに多い。お金稼ぎなら事業を興すかサラリーマンになるほうがよほど割がいいし、売れるかどうかわからない小説を書くよりモンハンをやってるほうがずっと楽しいし、書かなければアマゾンや読書メーターや2ちゃんねるで叩かれることもない。それでも小説を書くのは、作家それぞれ理由がある。きっと「書く理由」と「書かない理由」の天秤がどちらにふれているか、なのだろう。
 話がだいぶズレたが、三つ目の理由については、私の「作家である」状態が不安定だから、だろう。ベテランであることにメリットはなにもない。単なるステータス変化であり、その変化を実感できないでいる。

 ネガティブな内容に見えたかもしれないが、私自身は現状についてとてもポジティブだ。本を出すという行程に習熟したけれど気持ちは今も新人でいられる。新しいことに挑戦したいし、次はもっと面白い小説を書いてやる、という意欲にもあふれている。しんどいことも多いが、苦労は達成という果実を甘くするスパイスだ。挑戦は続く。だからこそ、挑戦する価値がある。
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