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文体について

 最近考えていることに「文体」がある。文体とは文章に表れる「人相」のようなもので、見れば「おや、あいつが書いた文章かな」と思わせ得るものだ。
 この文体というものは厄介で、消そうと思ってもなかなか消えるものではない。私は、個人的には自分自身の文体がプレーンなものだと考えているのだが、それでもどこかしらに「三上康明的人相」が漂っているように思われる。文体が消えないとどう厄介なのかというと、全然違うジャンルの小説にチャレンジするとき、足かせになる場合があるのである。ゆるふわコメディ(そんなもの存在するのか謎だが)をずっと書いていた人間が、ガチグロサスペンス(そんなものが存在……する)を書くとして、ゆるふわコメディの文体でサスペンスを書くと、内容とは関係ないところで違和感が表出する。
 そんな方向違いのものにチャレンジするなと言うなかれ。小説家とは挑戦の連続である。
 この文体なるものがどのようにして人に備わり、根を張り、成長していくのか。そもそもの発端では、それまでに摂取してきた文章によるのだろう。たとえ夜な夜な公園に集まって迷惑行為にふけるようなならず者であったとしても、日経新聞を取って「諸君!」を愛読している人物であれば、書く文章は硬いであろう。
 逆に、最先端の理数研究者であったとしても漫画しか読んでいなければ、硬い文章を書くことは難しいだろう(論文は読んでいないものとして考える)。
 ちなみに思考回路ができていないとか、性格が四角四面であるとか、とどのつまり頭のいい悪いとか、そういうことは関係ない。ここではあくまで、書かれた文章から匂い立つ文体の話をしている。

 無論のこと私の言っていることは推測に過ぎない。また人の文体を判断するには、かなり長い文章を書かせる必要があるから、大半の市井に生きる人にとって自分の文体がなんなのかなんぞ気にする必要はない。短い文章をいくつか書かせても書く題材によって文体が変化するから、文体をチェックしようがないし、長編小説程度の長い文章を書く人間ははっきり言えば特殊だ。
 題材によって文体が変化するのは特に、ふだんからものを書かない人に起きやすい現象だ。書くことに慣れていないのである。そう、文体とは「書き癖」と言い替えてもいい。
 癖というのは何度も何度も同じことを続けた結果生じる、その人物特有の偏向である。書けば書くほど癖は強くなる。文体がはっきりしてくる。だが違うことを繰り返せば、偏向は緩和される。

 私は表現の幅を狭めたくないがために、ラブコメも書けばバトルも書くし、会社ではレポートを書いたりこうしてブログを書いたりもする。小説家としての武器を増やしている。
 だが裏を返すと、あちこちで矯正が入るために私の文体が薄れている可能性もある。コアなファンがつく小説というのは、小説家の文体が色濃く表れているものであることが多い。私のラブコメが好きな読者は、バトルものを読みたいと思うだろうか? ジレンマである。
 だがはっきりしていることもある。悩まなければ、人間は成長しない。私は今文体についてあれこれ考えて悩んでいるが、この悩みに結論が出れば私は納得して前へ進める。

 小説家を志している人は、「序盤と終盤で、なんか文章の感じが違う……」と感じたことがあるかもしれない。それにはふたつの可能性がある。ひとつは、ただ単に書き上げるまでに時間をかけ過ぎたこと。当初考えていたアイディアに対して、惚れ込みから懐疑へと自分自身が変質している。懐疑、でなく、飽き、でもよい。文章の感じが違うのは文体が変わっているのではなく、書き手のモチベーションが変わっているのだ。
 時間をかけ過ぎてもいないのに、この現象が起きたという場合は朗報だ。書いている途中で書き手が成長しているのである。もともと書き慣れてなかっただけだろ、と言ってもいいが、こういうものはポジティブに考えるがよい。書き始めたときと書き上げたときで、着実に成長している。すばらしいではないか。
 だが蛇足ではあるが、ひとつの作品の中で文体が変化していたとしても、本人以外にはほとんど気づかれない。他人が途中で書いたりしない限り、そうそう文体というものは変わらない。
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