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歌声と冬の風

 今年の夏は長く、秋になったと思えば冬の足音が聞こえる。日本はいつの間にか四季を失ったようだ。春と秋は、不安定な季節でもある。着る服に困り、寒暖の差に風邪まで引く。どことなく気持ちを浮つかせる空気も漂う。
 とはいえ春秋がなくなればいいのか。無論違う。夏冬しかなくなれば、人々の心は黒白に振れやすくなるだろう。日本は「和」を尊び、「和」とはすなわち「曖昧さの許容」だ。春秋は曖昧であり、曖昧であることが文化を創ってきた。

 執筆中に音楽を聴く。今のシリーズを執筆するBGMは「ONE OK ROCK」と決めており、「ワンオク」は執筆以外において一切聴かない。聴けばスイッチが入る。物語を進めようというスイッチであり、主人公のテーマソングでもある。このシリーズがいつまで続くかは不明だが、シリーズが完結しないことには普段の生活で「ワンオク」を聴けない。
 人間の五感とは面白いもので、感覚がつながっているのである。「ワンオク」を聴いて書き始めた当初、季節は冬だった。ボーカルのメロウなシャウトが、暖房を効かせすぎた喫茶店の、足下に漂う冷気と混じり合って不思議としっくりきた。だから今もなお「ワンオク」を聴いているとそれが春であろうと夏であろうと秋であろうと、冬の息吹を感じる。


 一本の小説を書き上げるまでに、私は無数のコーヒーカップを積み上げていく。同様にこうと決めたミュージシャンの音を聴き続ける。
 校了し、完成品が献本として送られてくる。ずっしりとした紙包みを開くと、私の耳には音楽が流れ、コーヒーの香りが鼻をつく。
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